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LMC Championships 2008


ラウンド 1: 東貴雄 vs 有田隆一

Written by Daisuke Kawasaki

もし仮に、筆者が 2008 年のトーナメントシーンを総括するとしたらば、現時点では「千葉コミュニティの躍進」というファクターを入れないわけにはいかないだろう。

国内でグランプリが開かれれば、必ずトップ 8 プロフィールに「千葉」の 2 文字があり、先月行われた日本選手権にも、2 名が送り込まれている。

ここで特筆するべきなのは、その層の厚さである。「魔王」三原 槙仁・「グランプリの勝ち方教えて、プロツアーしか勝てへん」有田 隆一・「インテリモンスター」三田村 和弥といったプロプレイヤーだけが実績を残しているわけではない。むしろ、毎回の様に、筆者のような「魔界外」の人間にとって新しいプレイヤーが活躍し、そのたびに「また魔界か」と驚かされるのだ。

その理由として、千葉の草の根トーナメントである「LMC」の影響が大きいであろうことは想像に難しくない。今年に入り、ほぼ毎週、しかも、多いときには週に 2 回開催される LMC での切磋琢磨が、今シーズンの千葉コミュニティの躍進の一因なのである。つまり、千葉コミュニティの強さの秘密は LMC にあるといっても過言ではないだろう。

というわけで、前置きが長くなってしまったが、以前から魔界に潜入取材する機会をうかがっていた筆者が、今日、千葉市民会館で開催される「LMC Championships」を取材し、千葉コミュニティの秘密をお伝えしようというわけなのである。端的にいえば、取材記事なのである。

この 1 年間での LMC での成績によってインバイトされるこの大会に、千葉の秘密が結集しているのは間違いない。アラーラの断片発売によって変化したスタンダード環境を占う意味でも、積極的に千葉の秘密を暴露していきたいと思う。

まずは第 1 回戦のフィーチャーマッチから。

有田隆一

有田  「マジック大好きだから、8 回戦いたくて、バイないんだよ」

と語るのは、有田 隆一。日本屈指のプロツアーサンデー進出記録をもつ、世界的な強豪である。

ちなみに、ここで有田がいう、バイについて、簡単に補足しておくと、本大会は、これまでの LMC での成績に応じて、最大 3 回の不戦勝が与えられる。たとえば三原や三田村は当然のように 3 バイを獲得している。

そんな中で有田がバイを持っていないことには諸説あるだろうが、おかげで第 1 回戦から魅力的なマッチアップを取材できるのだから、感謝するべきであろう。

有田が使用するのは、いわゆるクイッケントースト。5 色コントロールである。アラーラで各種魔除けをはじめとした魅力的なスペルが追加されたことにより、新環境でのメタゲームの一角を担うデックとなっている。

対するは、東 貴雄。大学が忙しいため、あまり LMC に参加できなかったというものの、その中できちりとこのチャンピオンシップの参加権を獲得しているあたりから、実力が伺える。

使用しているデックは、赤白中速ビートダウン。アラーラの断片のカードが多く採用されているということで、非常に注目のアーキタイプである。

Game 1

先手は有田。

1 ターン目・2 ターン目と続けての鮮烈土地のセットから《台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks》をキャストする。

対しての東だが、1 ターン目に《変わり谷/Mutavault》セットから《岩だらけの大草原/Rugged Prairie》を2枚。そして、有田の《台所の嫌がらせ屋》に対しては《マグマのしぶき/Magma Spray》を打ち込む。

ダメージで勝利するデックにとって目の上のたんこぶであった《台所の嫌がらせ屋》だが、しかし、アラーラで《マグマのしぶき》という対処手段ができたことは注目したい要素である。

東は、《ブリン・アーゴルの白鳥/Swans of Bryn Argoll》を場に追加する。

《ブリン・アーゴルの白鳥》《叫び大口/Shriekmaw》で除去し《台所の嫌がらせ屋》でアタック。これに対して東は、《豪腕のブライオン/Brion Stoutarm》をキャストし、これを《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》で強化する。

《豪腕のブライオン》を想起の《叫び大口》で除去しつつ、《遍歴の騎士、エルズペス》に対しては《台所の嫌がらせ屋》でアタックし、忠誠カウンターをへらしにかかる有田だが、しかし、東は攻勢をゆるめず、《変わり谷》《遍歴の騎士、エルズペス》で強化しさらに有田のライフを削っていく。有田のライフは 10。

能力を使いながら忠誠カウンターを増加できる《遍歴の騎士、エルズペス》に手を焼く有田。東は《神の怒り/Wrath of God》をキャストし、《台所の嫌がらせ屋》のサイズを下げることで、忠誠カウンターが 3 つの《遍歴の騎士、エルズペス》を間接的に守り抜く。

しかし、有田は世界でも屈指の強豪である。たしかに手を焼いてはいるが、だが、対処ができないわけではない。

東のターン終了時に《その場しのぎの人形/Makeshift Mannequin》《叫び大口》を呼び戻し、畏怖による問答無用の攻撃で《遍歴の騎士、エルズペス》をついに追い出し、《豪腕のブライオン》《恨み唸り/Spitebellows》と続けてキャストされた脅威も《砕けた野望/Broken Ambitions》で対処する。

手札には《炎渦竜巻/Firespout》《謎めいた命令/Cryptic Command》を複数抱え、完全に場を掌握した形となった。

マナさえ十分にあれば、の話だが。

有田は土地が 7 枚でストップしてしまう。これは端的に言えば、1 つのターンに 2 つの呪文をカウンターできないという事だ。そして、現状の東のメインのアタッカーが《炎渦竜巻》で対処できない土地クリーチャーであるのもかなり厳しい。

こつこつと削り続けた有田のライフは、ついに 4。そして、有田のターン終了時に 2 発打ち込まれる《火葬/Incinerate》。当然これの片方を有田はカウンターしなければいけないわけで、《謎めいた命令》が打ち込まれることになるのだが、しかし、残りのライフは 1 となってしまう。

この最後のライフを削り取るべく有田に襲いかかる《変わり谷》には《糾弾/Condemn》が打ち込まれる。だが、追加で場に送り込まれた《ブリン・アーゴルの白鳥》を前に小考する。

Incinerate

短期的なリスクと引き替えに将来的なコントロールの確立を重視するべきと考えてか、有田はまず、《炎渦竜巻》を「3 マナ 3 枚ドロー」という超高効率のドロースペルとして使用する。そう、とにもかくにも土地が必要なのだ。手札には《謎めいた命令》《その場しのぎの人形/Makeshift Mannequin》も握られており《ブリン・アーゴルの白鳥》自体はどうにでも対処できるのだ。

ここで、東の手札は 1 枚。

有田は、東のアップキープに《ブリン・アーゴルの白鳥》を手札に戻す。ここで《ブリン・アーゴルの白鳥》を再びキャストしするのにマナを使ってくれれば、有田がコントロールを確立することが確約されたようなものだ。

この時点での東の手札は、土地。東は有田の《謎めいた命令》に対応する形で《精神石/Mind Stone》をサクリファイスして 1 ドローする。

引いたカードは、2 枚目の《ブリン・アーゴルの白鳥》。これは、有田の今後の安泰を覆せるカードではない。そして、有田の安泰を覆せる可能性があるターンは、現状では少なくともこのターンしかないのだ。

東は、カードをドローする。

ライブラリーのトップは《火葬》

東 1-0 有田


Game 2

東貴雄

先手の有田がマリガン。つきあうように東もマリガン。

お互いにファーストアクションは 3 ターン目。有田が《熟考漂い/Mulldrifter》を想起したかえしに東が《台所の嫌がらせ屋》をキャストする。

ここで、攻め手に回ることに成功した東は、《変わり谷》とあわせて有田のライフを削ろうと考えるが、ファーストアタックは《謎めいた命令》でいなされてしまう。

返しのターンに有田は、今度は正規のコストで《熟考漂い》を。これを《火葬》で対処した東は、《台所の嫌がらせ屋》のみで攻撃し、残した 4 マナで《復讐のアジャニ/Ajani Vengeant》をキャスト。有田の《反射池/Reflecting Pool》がアンタップするのを防ぐ。

有田は、この《復讐のアジャニ》に対処するために《カメレオンの巨像/Chameleon Colossus》をキャストするが、続いて場に追加されたのは《氷の干渉器/Icy Manipulator》

一度は 4 つの忠誠カウンターを減らすことに成功した有田の《カメレオンの巨像》だったが、この先は《氷の干渉器》に干渉され続けてしまう。

ライフを守りながら《復讐のアジャニ》に対処するという矛盾した命題を突きつけられてしまった有田。《変わり谷》《台所の嫌がらせ屋》の攻撃を、《糾弾》《バントの魔除け/Bant Charm》で捌こうとするが、しかし、《台所の嫌がらせ屋》を除去するべくキャストされた《バントの魔除け》《耳障りな反応/Guttural Response》でカウンターされてしまう。

《台所の嫌がらせ屋》を場に追加し、なんとか主導権を取り返したい有田なのだが、東も《台所の嫌がらせ屋》を場に追加してきたため、変わらず東が完全に場を支配している。

東は、《復讐のアジャニ》のターゲットを《反射池》から《カメレオンの巨像》に変更する。そして、有田の攻撃宣言に対して《台所の嫌がらせ屋》をタップさせず、あえて《復讐のアジャニ》に対して攻撃させる。

この《台所の嫌がらせ屋》を討ち取るべく東は《ギトゥの宿営地/Ghitu Encampment》をクリーチャー化させるが、有田はこれを《バントの魔除け》で除去し、最後の手札である《雲打ち/Cloudthresher》をも場に追加。仕方なく東は《台所の嫌がらせ屋》同士の相打ちを選択する。

東はさらに《台所の嫌がらせ屋》をキャストする。この《台所の嫌がらせ屋》は、有田のいわゆる「不健康な」《台所の嫌がらせ屋》にとどめをさす。この時点で有田の場のクロックは《雲打ち》《カメレオンの巨像》となるのだが、しかし、《氷の干渉器/》《復讐のアジャニ》によって完全に封じ込められている。その姿はさながらプリズンである。

続くターンに東は2体の《台所の嫌がらせ屋》で攻撃。ライフが 10 残っているものの、《復讐のアジャニ》が実質的に 3 点のダメージを確約している以上、ここでの 4 点ダメージは、有田のライフを《火葬》1枚の射程範囲としてしまう。幸い有田が前のターンにトップデックしていたカードは《バントの魔除け》であり、《台所の嫌がらせ屋》を 1 体ライブラリーに押し返すことに成功する。有田のライフは 8。

一方の東の事情。東の手札には、2枚目の《復讐のアジャニ》と、《火葬》が握られている。《台所の嫌がらせ屋》の攻撃がそのまま通っていれば、ゲームを終了させることができたのだが、現状ではそうも行かない。最善かつダメージの最高効率を考え、東は、《復讐のアジャニ》の能力で有田に 3 点のダメージを与えつつ墓地に送り込み、そして、《復讐のアジャニ》の 2 枚目をキャストし、さらに 3 点のダメージを与える。これで有田のライフは 4。

これで一時的にプリズン状態から抜け出すことができた有田。すでに《カメレオンの巨像》は 2 回能力を起動することが可能であり、あわせて 23 点までのダメージをたたき出すことが可能である。有田は、東のライフを確認する。

36。

軽い絶望の中で有田がドローしたカードは、《台所の嫌がらせ屋》《火葬》に対処できるものではなかった。

東 2-0 有田


Ajani Vengeant

有田 「1 本目とれなかったのが敗因やったね…… 2 本目負けても、《復讐のアジャニ》が入ってくるってわかってれば、3 本目は《くぐつ師の徒党/Puppeteer Clique》あたりをサイドインして、もう少し有利に戦えるはずやしね」

1 本目で土地が止まってしまったことが大きな敗因であったと分析する有田だったが、その一方で、2 本目を完全に支配した《復讐のアジャニ》の存在が大きかったことが言外からうかがえる。

 「ネットで見つけて、昨日作ったんですけど、やっぱりクイッケン系のデッキは苦手ですね。そこで、サイドボードで何か考えなければならなかったんですけど、最初は《大爆発の魔道士/Fulminator Mage》を検討していたんですよ。そこで、調整につきあってくれていた秋葉のホビステの店員さんが《復讐のアジャニ》でもいいんじゃないかって助言してくれまして」

たしかに、土地をタップしつつ、汎用性を高められるのは、大きな魅力であり、また、放っておけば、-7 能力で一方的な《ハルマゲドン/Armageddon》を食らうことになるため、何かしらの能動的な対処を迫られることになってしまう。

クイッケントーストという、受動的な展開を希望するアーキタイプにとって、この能動的に脅威に対処しなければいけないというのは思いのほか厳しいことは、実戦中で有田が証明してくれた。また、一度場に出てしまえば、ほぼ確定の 3 点ダメージとしても計算できるのがダメージで勝つこのデックにとっては重要である。

なんにせよ、このシークレットサイドボードの効果の大きさは、東のこのコメントが証明しているだろう。

 「とにかく、助言をくれた店員さんに感謝、ですね」

Final Result:東Win!


Quick'n' Toast - Arita Ryuichi / LMC Championships 2008
 4  熟考漂い/Mulldrifter
 4  台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks
 3  カメレオンの巨像/Chameleon Colossus
 3  雲打ち/Cloudthresher
 2  叫び大口/Shriekmaw

16 Creatures 4 謎めいた命令/Cryptic Command 4 バントの魔除け/Bant Charm 3 砕けた野望/Broken Ambitions 3 その場しのぎの人形/Makeshift Mannequin 2 糾弾/Condemn 3 炎渦竜巻/Firespout
19 Spells 1 島/Island 2 地底の大河/Underground River 4 溢れかえる果樹園/Flooded Grove 4 鮮烈な林/Vivid Grove 4 鮮烈な小川/Vivid Creek 2 鮮烈な草地/Vivid Meadow 4 秘教の門/Mystic Gate 4 反射池/Reflecting Pool
25 Land 60 Total Cards
 2  糾弾/Condemn
 3  思考囲い/Thoughtseize
 2  神の怒り/Wrath of God
 3  薄れ馬/Wispmare
 3  くぐつ師の徒党/Puppeteer Clique
 2  ブレンタンの炉の世話人/Burrenton Forge-Tender

15 Sideboard Cards
Clover time - Higashi Takao / LMC Championships 2008
 4  ブリン・アーゴルの白鳥/Swans of Bryn Argoll
 3  豪腕のブライオン/Brion Stoutarm
 4  台所の嫌がらせ屋/Kitchen Finks
 4  恨み唸り/Spitebellows

15 Creatures 4 山背骨の発動/Knollspine Invocation 4 精神石/Mind Stone 4 火葬/Incinerate 4 マグマのしぶき/Magma Spray 4 神の怒り/Wrath of God 1 遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant
21 Spells 3 平地/Plains 2 山/Mountain 3 ギトゥの宿営地/Ghitu Encampment 4 岩だらけの大草原/Rugged Prairie 4 変わり谷/Mutavault 4 戦場の鍛冶場/Battlefield Forge 4 古の円形劇場/Ancient Amphitheater
24 Land 60 Total Cards
 4  氷の干渉器/Icy Manipulator
 3  紅蓮地獄/Pyroclasm
 2  耳障りな反応/Guttural Response
 3  復讐のアジャニ/Ajani Vengeant
 3  薄れ馬/Wispmare

15 Sideboard Cards
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